ルール・法務

ゲーム実況と著作権|何がNGかを条文と罰則から整理

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結論

ゲームのプレイ映像を録画して投稿する行為は、著作権法の複製権(第21条)・公衆送信権(第23条)・翻案権(第27条)に触れます。実況が成立しているのは法律で許されているからではなく、メーカーがガイドラインで許諾しているからです。「私的使用」も「引用」も公開前提の実況の根拠にはなりません。まずどの権利に触れているかを正確に把握してください。

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結論:実況は「権利が働く行為」を許諾で成立させている

ゲーム実況は、著作権法上「やっていいこと」として書かれているわけではありません。本来なら権利者しかできない行為を、メーカーが許諾しているから成立しています。

この前提を取り違えると、ガイドラインを読まずに「みんなやっているから大丈夫」という判断をしてしまいます。まず、実況のどの行為がどの権利に触れているのかを条文単位で押さえてください。

実況で必ず行う行為 触れる権利 条文 条文の書き方
プレイ映像を録画・保存する 複製権 第21条 「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」
動画を投稿する・生配信する 公衆送信権 第23条第1項 「公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する」
映像を切り貼りして編集する 翻案権 第27条 「翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」
映像に加工・改変を加える 同一性保持権 第20条 「その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」

キーワードは「専有」です。その権利を持つ人だけができる、という意味になります。つまり許諾がなければ、録画も投稿も本来はできません。

各メーカーが実際にどこまで許諾しているかはゲーム実況ガイドライン一覧で比較しています。

「私的使用」は公開した時点で使えない

第30条の私的使用は、実況の根拠になりません。 条文はこう書かれています。

個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするとき

限定しているのは使用する範囲であり、収益の有無ではありません。無料で公開しても、不特定多数が見られる状態にすれば「限られた範囲内」から外れます。

「収益化していないから大丈夫」という説明をよく見かけますが、条文にその条件は存在しません。混同しやすいので整理します。

よくある理解 条文上の実際
無料公開なら私的使用の範囲 範囲は「個人的・家庭内その他これに準ずる限られた範囲」。公開の時点で外れる
広告を付けなければセーフ 第30条に収益の有無は書かれていない
ダウンロードしていないからセーフ 録画した時点で複製、アップロードした時点で公衆送信
短ければセーフ 長さの基準は条文にない

「引用」も実況の根拠にはなりにくい

第32条の引用には2つの条件が明記されています。

その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない

問題になるのは「引用の目的上正当な範囲内」です。実況動画はゲーム映像が画面のほぼ全体を占め、自分の発話が添えものになりやすい構造をしています。主従が逆転していれば、引用としては説明しづらくなります。

同じ「ゲーム映像を使う」でも、次の3つは前提がまったく違います。

つまり実況で拠り所になるのは、引用規定ではなくメーカーの許諾です。だからガイドラインを読む必要があります。

罰則は「軽い違反」では済まない

刑事罰の水準を把握しておいてください。第119条第1項の法定刑は10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金で、併科もあります。

対象 法定刑 条文
著作権・出版権・著作隣接権の侵害 10年以下の拘禁刑 または 1,000万円以下の罰金(併科あり) 第119条第1項
著作者人格権・実演家人格権の侵害 5年以下の拘禁刑 または 500万円以下の罰金(併科あり) 第119条第2項第1号
法人の業務として第119条第1項に違反 法人に3億円以下の罰金 第124条第1項第1号

これに加えて、民事上の損害賠償請求は別枠で行われます。刑事罰と民事の賠償は排他的な関係ではありません。

親告罪と非親告罪の線引き

原則は親告罪です。 第123条第1項に「第百十九条第一項から第三項まで(中略)の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」と定められています。

ただし第123条第2項に例外があります。次の条件がそろうと告訴なしで起訴できます。

# 非親告罪になる条件
1 対価として財産上の利益を受ける目的、または権利者の見込み利益を害する目的があること
2 有償著作物等を「原作のまま」複製物譲渡または公衆送信すること
3 その結果、権利者の見込み利益が不当に害されることとなる場合であること

実況動画は自分の音声や編集が加わるため、「原作のまま」という条件に当たりにくい構造です。ただしこれは「訴えられない」という意味ではありません。 第123条第1項の親告罪としての立件可能性は残ります。ムービーシーンだけを無編集で切り出して連続投稿するようなケースは、条件2に近づきます。

保護期間はまだ切れていない

「昔のゲームなら著作権が切れている」という判断は成立しません。

対象 保護期間 条文
一般の著作物 著作者の死後70年 第51条第2項
映画の著作物 公表後70年(創作後70年以内に未公表なら創作後70年) 第54条第1項
実演 実演を行った日の属する年の翌年から70年 第101条第2項第1号
レコード(原盤) 発行の日の属する年の翌年から70年 第101条第2項第2号

ゲーム映像は映画の著作物として扱われる場面が多く、その場合は公表後70年です。1985年に発売されたタイトルなら2055年まで保護が続く計算になります。

さらに、1本のゲームには複数の権利が並行して走っています。映像・プログラム・楽曲・声の実演が別々の権利者に属していることがあり、メーカーのガイドラインが全部をカバーしているとは限りません。楽曲の扱いはBGMの著作権で詳しく整理しています。

プラットフォーム側の条件も重なる

権利者の許諾を得ていても、投稿先のプラットフォームの条件を別に満たす必要があります。YouTubeは公式ヘルプで、ゲーム実況の収益化についてこう明記しています。

ビデオゲームに関するコンテンツで収益を受け取れるかどうかは、ビデオゲームの配信者のライセンスで許可される商用利用の権利によります。

長時間にわたってビデオゲームをしている様子やソフトウェアを使用している様子だけを収めた動画は、収益化の対象として認められません。

つまりメーカーの許諾とYouTubeの条件は二段構えです。メーカーが収益化を認めていても、無言でプレイし続けるだけの動画は、YouTube側の条件で収益化されない可能性があります。収益化の前提条件はYouTube収益化の条件にまとめています。

実況前に確認する順番

権利関係の確認は、この順で行えば漏れが出にくくなります。

1から4はメーカーごとに違います。15社分の判定はゲーム実況許諾チェッカーで検索できます。

よくある失敗

「記載がない=許可されている」と読む

ガイドラインに書かれていないことは、単に想定されていないだけの場合があります。許諾の範囲は書かれている範囲までです。

会社全体のガイドラインだけ見て終わる

カプコン・セガ・バンダイナムコはいずれも、タイトル個別のガイドラインがある場合はそちらが優先されると明記しています。会社のページを見て安心するのは早すぎます。

「非営利だから」で判断を止める

第30条の条文に収益の有無は書かれていません。判断基準は公開範囲です。

ゲーム内の楽曲を同一視する

ゲーム会社が楽曲の権利を持っていない場合があります。メーカーのガイドラインは、メーカーが権利を持つ範囲にしか及びません。

まとめ

  • 実況は複製権(21条)・公衆送信権(23条)・翻案権(27条)に触れる行為であり、メーカーの許諾で成立している
  • 第30条の私的使用は公開した時点で外れる。 収益の有無は条文の条件ではない
  • 第32条の引用は「目的上正当な範囲内」が条件。 主従が逆転する実況では説明しづらい
  • 第119条第1項の法定刑は10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金。法人は3億円以下
  • 原則は親告罪(123条1項)だが、対価目的かつ「原作のまま」の公衆送信は非親告罪(123条2項)
  • 映画の著作物の保護期間は公表後70年。レトロゲームでも切れていない
  • メーカーの許諾とプラットフォームのポリシーは別々に満たす必要がある

よくある質問

収益化していない実況なら著作権侵害になりませんか?
なりません、とは言えません。第30条の私的使用は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」と条文が範囲を限定しており、収益の有無は条件になっていません。インターネットで不特定多数に公開した時点でこの範囲から外れます。無料公開でも公衆送信にあたります。
実況は「引用」だと聞いたことがありますが違いますか?
違います。第32条の引用は「公正な慣行に合致するもの」であり「引用の目的上正当な範囲内」であることを求めています。実況動画はゲーム映像が主で自分の音声が従になりやすく、目的上正当な範囲を超えやすい構造です。数十秒のシーンを批評のために示す場合と、1本まるごとプレイする場合では前提がまったく違います。
著作権侵害は訴えられなければ罪になりませんか?
第123条第1項により、著作権侵害の罪は原則として告訴がなければ起訴できません(親告罪)。ただし第123条第2項に例外があり、対価を得る目的または権利者の利益を害する目的で、有償著作物等を「原作のまま」複製物譲渡・公衆送信した場合は告訴なしで起訴できます。実況は自分の音声などが加わるため「原作のまま」には当たりにくいですが、親告罪として訴えられる可能性は残ります。
昔のレトロゲームなら著作権が切れていませんか?
切れていません。映画の著作物の保護期間は第54条により公表後70年です。1980年代のゲームでも2050年代まで残ります。またゲーム機本体のシステムソフトウェアやBGMなど、複数の権利が別々に走っている点にも注意してください。
メーカーのガイドラインに従っていれば法的に安全ですか?
そのメーカーが権利を持つ範囲については安全といえます。ただしガイドラインは法律ではなく、メーカーが自社の権利について出した許諾です。ゲーム内で使われている楽曲の権利者がメーカーと別である場合や、コラボタイトルで著作権者が複数いる場合は、ガイドラインの範囲外の権利が残ります。

出典

本文中の数値・仕様は以下の一次情報を確認して記載しています。

  1. 公式 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号) (e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2026年8月12日確認
  2. 公式 ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン (任天堂) 2026年8月12日確認
  3. 公式 カプコン動画ガイドライン(個人向け) (カプコン) 2026年8月12日確認
  4. 公式 ビデオゲームやソフトウェアに関連したコンテンツ - YouTube ヘルプ (Google) 2026年8月12日確認