マイクとの距離とゲイン|声を張る前に感度の数値を見る
結論
録れる声が小さいとき、最初に疑うべきは声量ではありません。マイクの感度は製品ごとに大きく違い、オーディオテクニカの公式解説では、バックエレクトレット・コンデンサー型のAT2020が-37dB、ダイナミック型のAT2040が-53dBで「16dB=7倍ほどの違いがあります」と説明されています。実際の出力電圧は14.1mVと2.2mVです。同じ距離で同じ声量で話しても、機材によって入力レベルは7倍変わります。声を張って補うのは、最も体に負担がかかる方法です。
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目次
結論:声量は最後の手段
録れる音が小さいとき、調整できる場所は4つあります。このうち声量だけが、体に負担を寄せる方法です。
感度は製品によって7倍違う
オーディオテクニカの公式解説では、感度を次のように定義しています。
同じ音量がマイクに入った時に、どれくらい大きな音量の電気信号を発するかを表す数値
そのうえで、同社の2製品を比較した具体的な数値が示されています。
| 製品 | 型式 | 感度(0dB=1V/1Pa 1kHz) | 実出力電圧 |
|---|---|---|---|
| AT2020 | バックエレクトレット・コンデンサー型 | -37 dB | 14.1 mV |
| AT2040 | ダイナミック型 | -53 dB | 2.2 mV |
この2本は16dB=7倍ほどの違いがあります
「声が小さい」の原因が機材側にあることは普通にある
同じ距離・同じ声量で話しても、この2本では入力レベルが7倍違います。 ダイナミック型は感度が低いぶん、距離を詰めるかゲインを上げる前提の機材です。感度の数値を見ずに「自分の声が小さい」と結論しないでください。
型式ごとの特性と選び方は実況用マイクの選び方にまとめています。
近づきすぎにも上限がある
距離を詰める方向にも限界があります。最大入力音圧レベルという指標です。
1kHzの信号を収録する時に、全高調波歪率が1%へ達した時点の音の大きさをdBで表示
この値を超える音を入れると歪みます。 大きな声や笑い声が入る実況では、近づけすぎると歪みの原因になります。加えて、息が直接当たるとポップノイズが出ます。
感度が低いマイクほど、この上限に助けられる面もあります。 感度-53dBの機材は同じ声量では小さく録れますが、裏を返せば大きな音が入っても歪みにくいということです。驚いたときに声が跳ねる実況では、この特性が効きます。感度の低さは欠点ではなく、距離とゲインで埋める前提の設計です。
参考として、公式解説はダイナミックレンジの上限について「耳が壊れない範囲で最も大きな音は120dB程度」という目安を挙げています。
ゲインで距離を代替できない理由
「小さく録って後で上げればよい」は成立しません。信号と一緒にノイズも上がるためです。
S/N比は次のように説明されています。
1kHzで1Paの基準音圧をマイクが収録した時の音声信号とノイズの比
S/N比はゲインでは改善しない
ゲインは信号もノイズも同じだけ持ち上げます。比は変わりません。 小さく録るほど、後で上げたときに空調音・PCのファン音・キーボードの音が目立ちます。入り口で十分なレベルを確保するのが先です。 OBS側のフィルタで消せる範囲には限りがあります(音声ミキシング)。
音が出ないときはゲインの前に電源
コンデンサー型のマイクは電源が必要です。公式解説では「12~50V程度で現在は48Vが主流」とされています。
供給されていないと動作しません。 音が極端に小さいとき、ゲインを上げる前にファントム電源の供給を確認してください。オーディオインターフェース側のスイッチが切れているだけ、という事例は珍しくありません。ダイナミック型は電源を必要としないため、この確認は型式によって要否が変わります。
なお周波数特性は多くの製品が20Hz〜20kHzを謳っており、比較の決め手になりにくい指標です。仕様表の項目を、実況での意味と一緒に整理します。
| 仕様の項目 | 何を表すか | 実況での意味 |
|---|---|---|
| 感度 | 同じ音量が入ったとき、どれだけ大きな電気信号を出すか | 低いほど距離とゲインで埋める必要がある |
| 最大入力音圧レベル | 全高調波歪率が1%に達する音の大きさ | 近づきすぎ・大声で歪む上限 |
| S/N比 | 1kHz・1Paの基準音圧での信号とノイズの比 | ゲインでは改善しない。部屋の静かさが効く |
| 周波数特性 | 拾える周波数の範囲 | 多くが20Hz〜20kHz。決め手にならない |
| ファントム電源 | コンデンサー型に必要な電源 | 12〜50V程度、48Vが主流。ダイナミック型は不要 |
見るのは上の3つで足ります。
決める順番
電源が入っているか確認する
コンデンサー型は48V前後のファントム電源が必要です。ここが原因なら他をいじっても直りません。
使っているマイクの感度を調べる
数値が-50dB台なら、詰めるかゲインを上げる前提の機材です。
距離を決める
近づけるほど有利ですが、最大入力音圧レベルとポップノイズが上限を作ります。
ゲインを合わせる
S/N比はゲインでは改善しません。 上げるほど環境音が目立ちます。
それでも足りなければ声量を見直す
最後に持ってくる項目です。 声の濫用や酷使は音声障害の原因として挙げられています。
収録前チェック
録り始める前に確認する7項目
- コンデンサー型ならファントム電源が供給されている
- 使っているマイクの感度の数値を確認した
- マイクの正面が口に向いている(指向性の向き)
- 息が直接当たらない角度になっている
- ゲインを上げすぎて環境音が目立っていない
- 大きな声や笑い声で歪んでいない
- 声を張らずに済むレベルになっている
喉に痛みや違和感があるとき
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は音声障害について、声の濫用や酷使が原因のことが多いとしています。収録の設定で解決すべき問題を、声で補い続けないでください。 症状が続く場合は耳鼻咽喉科の受診を検討してください。声を守る設計は実況者の喉のケアにまとめています。
よくある失敗
録れる音が小さいのを自分の声のせいにする
感度が16dB違えば入力レベルは7倍違います。まず数値を確認してください。
小さく録ってから後で持ち上げる
S/N比はゲインでは改善しません。環境音も一緒に上がります。
近づけるほど良いと考える
最大入力音圧レベルを超えると歪みます。ポップノイズも増えます。
ファントム電源を確認せずにゲインを上げる
コンデンサー型は12〜50V程度の電源が必要です。48Vが主流です。
周波数特性でマイクを比べる
多くの製品が20Hz〜20kHzを謳っており、決め手になりません。
まとめ
- 録音レベルを決めるのは感度・距離・ゲイン・声量の4つ。声量は最後
- 感度の定義は「同じ音量がマイクに入った時に、どれくらい大きな音量の電気信号を発するかを表す数値」
- AT2020は-37dB、AT2040は-53dB。公式解説は「16dB=7倍ほどの違い」としている
- 実出力電圧は14.1mVと2.2mV
- 最大入力音圧レベルは全高調波歪率が1%へ達した時点の音の大きさ
- S/N比はゲインでは改善しない。小さく録るほど環境音が目立つ
- ファントム電源は12〜50V程度、現在は48Vが主流
- 周波数特性は多くが20Hz〜20kHzで比較の決め手にならない
- 声の濫用や酷使は音声障害の原因として挙げられている。設定で解決できることを声で補わない
よくある質問
声が小さく録れるのはマイクが悪いのですか?
声を張れば解決しますか?
マイクに近づけば近づくほどよいのですか?
ゲインを上げれば距離は関係なくなりますか?
ファントム電源の設定は音量に関係しますか?
数値はどこまで気にすればいいですか?
出典
本文中の数値・仕様は以下の一次情報を確認して記載しています。
- 公式 知っていそうで意外に知らない『スペック』の読み方:マイク編 (株式会社オーディオテクニカ) 2026年8月13日確認
- 公式 音声障害 - 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 (一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会) 2026年8月13日確認
- 公式 Audio Mixer Guide - OBS Knowledge Base (OBS Project) 2026年8月13日確認